黒澤明の代表的アクション時代劇『用心棒』の続編的作品。
本来は山本周五郎原作の『日日平安』を脚本化した殺陣のない比較的穏やかな作品だったが、
『用心棒』の大成功に気をよくした映画配給会社の強い要望で、三十郎(三船敏郎)が復活。
『用心棒』に勝るとも劣らぬ迫力あるチャンバラ活劇として仕上がっている。
物語の舞台はさる大名家のお家騒動。
次席家老の不正を正そうとする井坂伊織(加山雄三)ら若侍たちに、三十郎が助太刀する。
城代家老の深慮遠謀に気づかず、
むざむざ大目付 菊井の甘言にのせられる若者たちにあきれながらも手を貸す三十郎。
仲代達矢演じる室戸半兵衛との決闘シーンは、日本映画史上に残る名シーンと言われている。
しかし、個人的なオススメは最後のシーン。
三十郎らに救い出された城代家老の妻がお礼を述べるシーン。
夫人は、容赦なく人を斬る三十郎の心に、人間同士が作る社会への希望が無いことをたしなめ、
希望を持てば必ずよい結果になると優しく語りかける。
眩しそうに目を逸らしていた男だが、改めて夫人から名前を聞かれると困った様子になり
「私の名前ですか。…つばき、椿三十郎。いや、もうそろそろ四十郎ですが」と空を見上げる。
このシーンこそ、三船だからこそのシーンだと思う。
豪放磊落で野性味あふれる椿三十郎が思わず見せるてらい。
このチャンバラ活劇を殺伐としない、なんともあたたかい雰囲気で締めてくれている。
1962年度発表・モノクロ・96分
特典映像付