お釈迦さまは、仏教の教えを多くの人に伝えるために、多くのたとえ話、物語をなされました。経典に遺された多くのお話、物語は、仏典童話、仏教物語として今も語り継がれています。仏典童話・仏教童話には、仏教の教えに繋がる“気づき”があります。
ただできれば、本作掲載、収録の童話や物語、ただの子供も大人も楽しめる童話や物語としてまず楽しんでいただきたいと思います。仏教を伝えるためのもの、み仏の教えにつながるもの、そう思うと物語がなんだか可愛そうです。素直に物語の世界を楽しんでいただき、その結果、み仏の慈悲を感じていただけたら、なによりだと存じます。ぜひお楽しみください。
連動書籍:B5変形/48ページ・カラー挿絵多数
仏教の物語・仏典童話の絵本 収録内容
アングリマーラの出家
師匠夫婦の妬みを受け、呪いをかけられた若いバラモンがいた。1000人を殺害し、その指で首飾りを作るという暴挙に出た彼を、人々はアングリマーラ=指で作った首飾りと呼んで、恐れ、蔑んだ。1000人目、アングリマーラーの刃は、彼を心配した母親に向けられるのだった・・・。 《アングリマーラ経より》
怨みを超えて
欲深な隣国が攻め入ってきたとき、平和な国の王は、戦争を避け、王位を明け渡すと、王子と共に山奥に身を潜めました。「怨んではならぬ。怨みはより大きな怨みを生む」。そう言い残して王は死に、王子は一人山を下りました。数年後、身分を隠した王子は、あの欲深な隣国の王に重用されていたのですが・・・。 《六度集経より》
お粥
父の遺産で幸せに暮らしていた兄弟。然し1年後、弟は父の戒めを破り、財産の半分を持って家を出ます。さらに弟は浪費を重ね、すべての財産を失うたびに無心に来る始末。しかし兄は弟を見捨てず、父の遺産を分けてやっていました。そんなある日、洪水が起こり、兄は全ての財産を失ってしまいます・・・。 《賢愚経より》
おごり
比丘のジョーティシュカは座禅やお釈迦さまのお話をわかりやすく伝えることに長けたうえ、お布施などを貧しい方々に分け与えたので、多くの人々に慕われていました。しかし、それを妬んだ先輩の比丘からはさまざまな言葉を投げかけられていました。弟子からそのことを聞いたジョーティシュカは・・・。 《大荘厳経論より》
おとし穴
妻は、夫の年老いた母に一生懸命尽していましたが、次第に嫌になってきました。ある祭りの日、火に飛び込むと天人の世界に生まれ変われるとという迷信を利用して、母親を殺そうと考えました。そして・・・。欲がすべての幸せを台無しにしてしまう、そんなお話です。 《雑宝蔵経より》
少年
ある王国でお釈迦さまが聴衆の中の一人の少年をお褒めになられた。貧乏な少年は、その日の食事にも事欠く生活を送っていた。少年が褒められたことを妬ましく思った王は、罠を仕掛けて少年に恥をかかせた。聴衆たちが去った後、お釈迦さまは王に向かい、王の若き日のことを語って聴かすのだった・・・。 《根本説一切有部毘奈耶薬事より》
土まんじゅう
托鉢に出かけたお釈迦さまと阿難陀が出会った些細な出来事。でも、そこには布施の真実が隠されていました。二人が托鉢で立ち寄った本当に貧しいバーラナシー郊外の広場。子供たちがお店屋さんごっこをしている地で、二人が体験した出来事とは? 《賢愚経より》
仲直り
幼馴染のシンとアニルダは、行き違いから長い間憎みあっていました。あるときシンは、アルニダを困らせようと、比丘の一行にアルニダが食事に招待をしていると嘘をつきます。大勢の比丘に突然、家に来られたアルニダの家はてんやわんや。しかし食事を終えた比丘から贈られたお釈迦さまの言葉に、アルニダは自分が一番欲しかったものに気づきます。 《大荘厳経論より》
ひとくちの水
お釈迦さまのお弟子で神通第一と云われたモッガラーナ(目連)は、町で水が飲めず苦しんでいる人間に出会います。不憫に思うモッガラーナに、お釈迦さまはそれが因果応報の報いであること、すべての恵みの源について示されます。 《撰集百縁経より》
ふくろうの夢
月の一際明るい夜、一羽のフクロウが高い木の枝に留まりました。いずこからか声がし、昨夜、その地の古井戸で起こったサルの群れの話を語りました。古井戸の水底に映った月の影を金の盆と思ったサルの頭は、仲間たちにその金の盆をとるように命じました。そして・・・。 《根本説一切有部毘奈耶薬事より》