肥後熊本は五木の生まれ、姓は矢野、名は竜子、通り名を緋牡丹のお竜と発します
藤純子が歌う主題歌『緋牡丹博徒』も大ヒットした女任侠映画の傑作。藤純子演じる矢野竜子が、闇討ちされた父の仇を晴らさんと旅を続けるのだが、
藤純子の粋さ、美しさもさるものながら、脇を固める配役がいい。鶴田浩二、高倉健、菅原文太、若山富三郎、長門裕之・・・錚々たるメンバーが共演している。
お決まりの本手引のシーンも圧巻だ。本物の博打うちに叩き込まれたという所作の美しさと緊張感は他の映画ではなかなか見られない。
しかし配役や画面の美しさ以上に『緋牡丹博徒』を名シリーズたらしめるのは、やはり質の高い脚本だろう。女侠客“緋牡丹のお竜”の陰に潜む矢野竜子という女性の素顔、
そこを垣間見せながらも、許せぬ悪党に立ち向かうために、その女の幸せを捨て去っていく・・・どの作品も絶妙のプロットでそのカタルシスを描き出している。
『緋牡丹博徒』には、眼に映る美しさだけでなく、心を揺り動かす魂の美しさが語られている・・・。
各巻 2,800円(税別)
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緋牡丹博徒
明治初期の九州熊本。博徒・矢野仙蔵()に男手一つで育てられた一人娘の竜子(藤純子)は、幼くして母親と死に別れ、18歳で堅気の人との縁談が決まり、数日後に挙式を控えていた。ところがその矢先、父・仙蔵が何者かの闇討ちにあい殺害される。一家が離散するなか、竜子は父の遺体の側にあった財布を手掛かりに、父の仇を探して旅に出る。右肩口から目の覚めるような牡丹の刺青。女であることを封じ、全国津々浦々の賭場を流れ歩いた竜子は、やがて『緋牡丹のお竜』の異名をとる。そして5年、お竜は遂に仇を探しあてるが・・・。
【監督】山下耕作 【脚本】鈴木則文
緋牡丹博徒・一宿一飯
高利貸・倉持と笠松一家が農民を苦しめ私腹を肥やす上州。恩ある戸ヶ崎一家が笠松に全滅させられたと聞いたお竜は、跡目の勇吉(村井国夫)を支えるため上州に乗り込む。笠松に命を狙われ、寸前のところを一匹狼の渡世人・風間(鶴田浩二)に救われるお竜。しかし息をつく暇もなく、こんどは勇吉の妻まちが、郵便馬車の権利を狙う笠松に脅され、遂に権利書を渡してします。権利書を取り返そうと乗り込んだ勇吉も嬲り殺しに・・・。血を流さぬ解決を望むお竜だったが・・・。最終シーン、太鼓を打ち鳴らす富士の泣き顔が印象的なシリーズ第2作。
【監督】鈴木則文 【脚本】野上龍雄、鈴木則文
緋牡丹博徒・花札勝負
シリーズ屈指の人気作。熱田神宮勧進賭博の利権を巡り、昔ながらの渡世人・西之丸一家の杉山(嵐寛寿郎)と金原一家の争いにお竜が巻き込まれていく。ニセお竜を名乗る女賭博師お時は、盲目の娘の目を治すため金原にイカサマを強要され、遂には命を失う。杉山の息子・次郎と金原の養女・八重子は親同士の争いのため、上方へ逃亡。最後まで熱田神宮勧進の成功を願い、堪忍し続けた杉山は、勧進賭博の挨拶を終えると息を引き取った。そして西之丸一家は金原一家に惨殺され、奉納金を奪われる。全ては金原の欲一つ! 怒りの拳銃握りしめ緋牡丹お竜が立ち上がる・・・。共演は高倉健、若山富三郎、待田京介など。
【監督】加藤泰 【脚本】鈴木則文、鳥居元宏
緋牡丹博徒・二代目襲名
矢野一家、遂に復活。お竜のもとに集まる飛車角、常、大風呂敷(長門裕之)、不死身の富士松(待田京介)に清吉。折しも筑豊では石炭運搬の鉄道敷設工事を巡り、親分衆と川船業者が対立。川人足の生活を守ろうと頑強に抵抗する勘蔵との交渉の中、お竜の叔父・川辺(嵐寛寿郎)も世を去る。しかし川辺亡き後、権益欲に駆られた宝満一家の凶暴なやり口に、勘蔵はお竜に協力することを選ぶ。その後も続く宝満一家の嫌がらせ、妨害の中、筑後鉄道が完成、お竜は二代目襲名披露を行うが、そのとき一番列車が転覆!宝満一家が現場にへ向かうお竜らを襲うのだが・・・。共演は高倉健、清川虹子、大前均など。
【監督】小沢茂弘 【脚本】鈴木則文
緋牡丹博徒・鉄火場列伝
四国徳島。嵐の中、お竜を救った江口幸平(待田京介)は、小作人たちの代表として小作料争議に取り組んでいた。しかし旦那衆が雇った鳴門川一家により小作人たちは疲弊。さらに鳴門川は四国随一の観音寺親分と結託し、勢力拡大を企んでいた。そんな中、。賭場のいざこざから江口が負傷し、江口を慕う若者・千吉(里見浩太朗)が殺される。三次(鶴田浩二)の機転で一旦は収まったもの、お竜に味方する千吉の親分。武井は闇討ちされ、武井への恩と義理のため三次も斬り死にする。阿波踊りの狂乱の中、お竜の怒りが爆発し、徳島の夏に血の雨が降る・・・。
【監督】山下耕作 【脚本】笠原和夫、鈴木則文
緋牡丹博徒・お竜参上
『花札勝負』の後日談。数年前死に追いやったニセお竜の子お君を探すお竜。浅草でスリのおキイこそ、あの時のお君だと気づく。浅草ではおキイを養女にした鉄砲久(嵐寛寿郎)と鯨州政が一座の興行権をめぐり争っていた。お竜は差しの博打で鯨州政に勝利し、権利書を奪い返すが、数日後鯨州政は鉄砲久を謀殺し、おキイと鉄砲久の娘婿を誘拐。お竜の命も狙うが、駆け付けた熊虎(若山富三郎)に阻止される。おキイに思いを寄せる銀次郎が命を捨てて二人を救い出した夜、お竜は、渡世人・青山常次郎(菅原文太)立ち合いの元、鯨州政に差しの勝負=殺し合いを持ちかけるのだが・・・。
【監督】加藤泰 【脚本】加藤泰、鈴木則文
緋牡丹博徒・お命戴きます
上州伊香保の賭場で諍いに巻き込まれたお竜は、結城組組長・結城菊太郎に助けられる。お竜は、結城に仄かな想いを抱き、再び来ることを約束して九州へ帰る。一方、結城組の在地では兵器工場建設に伴う公害で周辺百姓が苦しんでいた。結城は工場と交渉し、農業に使う用水堀建設費用を捻出しようとするが、工場側に立つ富岡組罠により落命する。急を聞いて舞い戻ったお竜は陸軍大臣に直訴に及ぶ。大臣と懇意の熊虎(若山富三郎)の取りなしで成功したかに見えたが見えたが、悪行露見を恐れた富岡と軍事官僚により、結城組三代目の貞次も鬼籍に入る。菊太郎初七日の朝、ついにお竜は仕込み笛を胸に乗り込んでいくのだった。
【監督】加藤泰 【脚本】大和久守正、 鈴木則文、加藤泰
緋牡丹博徒・仁義通します
お竜の旧友・お神楽のおたか(清川虹子)の分家・堂万一家の岩木(松方弘樹)と伝法一家・嘉納が覇を競う大阪・安治川。度重なる抗争に死期を悟ったおたかはお竜に堂万三代目を岩木にと言い遺す。これに不満を持った松川(待田京介)をけしかけ、堂万の内部分裂を謀る嘉納。岩木やお竜、藤吉(長門裕之)らは松川を堂万に連れ戻そうとするが、伝法の不意打ちを食らい、岩木がダイナマイトで爆死する。急を聞き駆けつける岩木の戦友・北橋(菅原文太)、四国道後の熊虎(若山富三郎)。それぞれの怒りが大阪安治川の夜を真っ赤に染める・・・。シリーズ最終作。藤純子引退の花道を飾るオールスター出演の1作。
【監督】斎藤武市 【脚本】高田宏治