宮本武蔵。あまり歴史やチャンバラに興味がない御仁でも名前ぐらいは知っておられると思う。江戸時代初期に名を馳せた日本を代表する剣豪である。この宮本武蔵なる人物、名高き剣豪なれど、一介の武人に過ぎず、歴史上の活躍を見せた訳でもない。ただ名著『五輪書』と点在する資料にその名を残すのみだった。実のところ、宮本武蔵の名を日本随一の剣豪に押し上げたのは吉川英治の人気作『宮本武蔵』に他ならない。吉川英治は宮本武蔵の一生や『五輪書』の著述を丁寧に調べた上で、空白の部分を筆力で補い、野獣のような武蔵（たけぞう）が宮本武蔵へと変貌する様を、友人の本位田又八や、恋人のお通、佐々木小次郎、柳生宗矩ら幾多のライバルを織り交ぜ描いた。今、私たちが語る宮本武蔵は、実に吉川英治が描いた宮本武蔵である。
活動弁士から始まり独特の話芸でラジオで人気を博した徳川夢声は、この『宮本武蔵』の朗読をライフワークとし、1961年から１年10か月間、550回の長編朗読番組として発表した。本作は、そのCD化作品である。原盤の重複部分を削除するなど一部編集を加え、ＣＤ77枚、約90時間となっている。ところどころ物語を省略したり、要約したりしている部分があり、朗読は原作の約85パーセントほどとなるが、徳川夢声の話術により、吉川英治が描いた、『宮本武蔵』の生きている世界が生き生きと脳裏に浮かび上がる作品だ。
朗読 宮本武蔵 収録内容 【原作】 吉川英治 【朗読】 徳川夢声
《宮本武蔵 地の巻》
鈴 ／ 毒茸 ／ おとし櫛 ／ 花御堂 ／ 野の人たち ／ 茨 ／ 孫子 ／ 縛り笛 ／ 千年杉 ／ 樹石問答 ／ 三日月茶屋 ／ 弱い武蔵 ／ 光明蔵 ／ 花田橋 ／
《宮本武蔵 水の巻》
吉岡染 ／ 陽なた・陽かげ ／ 優曇華 ／ 河っ童 ／ 巡りぞ会わん ／ 茶漬 ／ 般若野 ／ この一国 ／ 芍薬の使者 ／ 四高弟 ／ 円座 ／ 太郎 ／ 心火 ／ 鶯 ／ 女の道 ／
《宮本武蔵 火の巻》
佐々木小次郎 ／ 狐雨 ／ 幻術 ／ 怨敵 ／ 美少年 ／ わすれ貝 ／ 無常 ／ 物干竿 ／ 山川無限 ／ 神泉 ／ 風車 ／ 奔馬 ／ 冬の蝶 ／ 心猿 ／ 公開状 ／ 孤行八寒 ／ 針 ／ 微笑 ／ 魚紋 ／
《宮本武蔵 風の巻》
枯野見 ／ 生きる達人 ／ 二人小次郎 ／ ふくろ路地 ／ 悲母悲心 ／ 鍬 ／ 町人 ／ 春の雪 ／ 雪響き ／ 今様六歌仙 ／ 牡丹を焚く ／ 断絃 ／ 春を病む人 ／ 伽羅の君 ／ 門 ／ 必殺の地 ／ 月一つ ／ 木魂 ／ はぐれた雁 ／ 生死一路 ／ 霧風 ／ 菩提一刀 ／ 乳 ／ 蝶と風 ／ 道聴途説 ／ 連理の枝 ／ 送春譜 ／ 女滝男滝 ／
《宮本武蔵 空の巻》
普賢 ／ 木曾冠者 ／ 毒歯 ／ 星の中 ／ 導母の杖 ／ 一夕の恋 ／ 銭 ／ 虫焚き ／ 下り女郎衆 ／ 火悪戯 ／ 草雲雀 ／ 草分の人々 ／ 喧嘩河原 ／ かんな屑 ／ 梟 ／ 通夜童子 ／ 一指さす天 ／ この師この弟子 ／ 土匪来 ／ 征夷 ／ 卯月の頃 ／ 入城府 ／ 蠅 ／ かたな談義 ／ 道草ぎつね ／ 懸り人 ／ 飛札 ／ 仮名がき経典 ／ 血五月雨 ／ 心形無業 ／ 雀羅の門 ／ 街の雑草 ／
《宮本武蔵 二天の巻》
衆口 ／ 虫しぐれ ／ 鷲 ／ 青い柿 ／ 露しとど ／ 四賢一燈 ／ 槐の門 ／ さいかち坂 ／ 忠明発狂始末 ／ もののあわれ ／ 撥 ／ 魔の眷属 ／ 八重垣紅葉 ／ 下り荷駄 ／ 漆桶 ／ 兄弟弟子 ／ 大事 ／ 夢土 ／ 花ちり・花開く ／ 逃げ水の記 ／ 栄達の門 ／ 天音 ／
《宮本武蔵 円明の巻》
春告鳥 ／ 奔牛 ／ 麻の胚子 ／ 草埃 ／ 童心地描図 ／ 大日 ／ 古今逍遥 ／ 紐 ／ 春・雨を帯ぶ ／ 港 ／ 熱湯 ／ 無可先生 ／ 無為の殻 ／ 苧環 ／ 円 ／ 飾磨染 ／ 風便り ／ 観音 ／ 世の潮路 ／ 待宵舟 ／ 鷹と女と ／ 十三日前 ／ 馬の沓 ／ 日出づる頃 ／ 彼の人・この人 ／ 魚歌水心 ／
《対談 吉川英治×徳川夢声》
◆ ＣＤ20巻（朗読CD77枚／約90時間）／特製木箱収納
◆ 解説小冊子（B5判・64頁）付
※原盤老朽化のため、若干お聞き苦しい点がございます。
一部に転写や雑音（原盤のキズ、磁気の影響）などがありますこと、あらかじめご了承ください。
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