お経・御詠歌など仏教CD＆DVD | 京都 市原栄光堂

紫式部の古典大作『源氏物語』を、作家・阿刀田高氏がコンパクトにわかりやすくまとめたエッセイ集『源氏物語を知っていますか？』。古典文学だけに若いときは避けがちな『源氏物語』なのだが、この『源氏物語を知っていますか？』を聴く（読む？）と、グッと印象が変わってくる。

　『源氏物語』は読者参加型の文学だと実感する。『源氏物語』の特徴として、心理描写があまり明確でないことがある。近年、小説にしても漫画にしても、登場人物の心中を文字で明確に表現しているものが多い。独り言だったり、台詞だったり、ト書きだったり、とにかくわかりやすい。『源氏物語』はこの心中描写を全795首に及ぶ和歌に託している。紫式部の和歌は同時代の和泉式部や紀貫之に比べると、率直にすぎるという研究家もおられるが、古典初心者にはわかりにくい。そのことが『源氏物語』が「何がおもろいかわからん小説」にしている。

　この795首の和歌に込められた光源氏の思い、女たちの思いを読み解くのが、『源氏物語』のおもしろさの醍醐味だ。和歌に秘められたメッセージを登場人物に成り代わり、読者であるあなたが読み解く、これが読者参加型の文学だと云う所以だ。阿刀田高は私たちに、このおもしろくも不慣れな、『源氏物語』の楽しみ方を教えてくれる。

　光源氏だけではない。紫の上が、明石の君が、藤壺が、薫や匂宮、朱雀帝や朧月夜が、いかに恋情を燃やし、嫉妬をし、大切な人を想ったのか・・・歌に込められた人々の心に思いを馳せる、古典文学のおもしろさを教えてくれる名エッセイを、朗読家・平川正三が全936分をかけ、見事な朗読で聴かせてくれる。