京都在住の私から見ても、古都・京都は不思議な町である。平安京遷都以来の寺社仏閣、宝物、文化を大切にする一方で、如何なる時代でも新しい文明、文化への好奇心は尽きることがない。伝統を重んじつつもさらに発展させ ようとする京都の気性は、京セラや任天堂、村田製作所や島津製作所、ワコール、ロームなどの世界最先端の企業や、ノーベル賞受賞者を続出する京都大学などの学術機関を育んでいる。
本作で紹介する、琵琶湖疏水、同志社大学今出川キャンパスの礼拝堂(チャペル)と彰栄館、旧梅小路機関車庫、旧毎日新聞社京都支局はいずれも、明治、大正、昭和初期に建てられた当時、最先端の建築物である。幕末、蛤御門の変により町の 3分の2を焼失し、東京遷都による衰退すると思われた京都。その京都の復興を支え、現代における世界的観光都市・京都の礎となった京都の近代化遺産をぜひお楽しみください。
全58分収録(本編45分T特典映像13分)
琵琶湖疏水・南禅寺水路閣
明治22年竣工。国指定史跡。幕末の政変で荒廃した京都の復興を目的に、京都府知事・北垣国道が計画。工部大学校を卒業したばかりの田邉朔郎が設計監督にあたった。後に日本初の営業用水力発電所・蹴上発電所も建設。明治 28年、日本初の電気鉄道・京電の運行に繋がっていく。京都の近代化遺産の代表格で南禅寺さまや京都インクラインとともに見る景色も非常に美しい。
同志社大学今出川キャンパス・礼拝堂&彰栄館
礼拝堂(チャペル)は明治19年、彰栄館は明治17年に竣工。共に国指定重要文化財。新島襄先生を校祖とする同志社。実はつい先ごろまで同志社中学校の運動場の一部は、隣接する名刹・相国寺さまから貸して戴いていた。異なる宗教に立脚しつつも、志を認めれば協力も厭わない、京都の懐の深さを感じる逸話である。
旧梅小路機関車庫
大正3年竣工。国指定重要文化財。旧梅小路機関区の扇形庫及び転車台は梅小路蒸気機関車館の『蒸気機関車展示館』として今も活躍している。我が国に現存する最古の鉄筋コンクリート造機関車庫であり、大規模な架構や合理 的な平面計画により、機関車修理などの効率的作業を可能とし,全国的な鉄道輸送力増強を支える一翼を担った。
旧毎日新聞社京都支局
昭和3年竣工。京都市登録文化財。20世紀前期に欧米で流行したアール・デコ風の鉄筋コンクリート構造3階建ての建造物。設計者・武田五一氏の代表作といわれる。毎日新聞社が移動した現在は、アートギャラリーやレストラ ン、フリースペースなどに使用され、京都の若者や観光客で賑わっている。
特典映像:藤森照信教授インタビュー
本作の監修者、東京大学教授・藤森輝信先生のインタビューを収録。蹴上発電所や旧毎日新聞社京都支局(現1928ビル)での撮影です。